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私は中継のテレビに意識を戻した。
ドラゴンがその大きな翼を揺らし、火星のマールスが吹き飛ばされる。魔法を唱えているのは土星のサトゥルヌスだ。でも、回復役の彼女は非力で傷1つつけられやしやい。
あぁ、胸がチリチリする。仲間が戦っているのだから私も本来であれば戦うべきだろう。魔法少女最大の火力、金星のウェヌス。美しさの象徴である私は全ての醜いものを物理的に粉砕する。
カメラが地上をうつす。地上では大勢の人だかりが出来て彼女達を見ていた。その光景にハッとする。
でも、他のその他大勢が戦わないのに私が戦う理由は何?本当に醜いのはこの人ごみの人たちじゃないの?
私たちだけがまた苦しみを負う世界ならこんな世界は明日終わらせてしまった方がいい。
本当は今でも街中を歩くのは怖い。
キャップを深く被らなければ人前にさえ出られない。以前はお洒落をしてお買い物をして誰かに見て欲しかった人生が、今は顔を隠して馴染み店を行き来するだけの人生だ。
そんな人生ならいっそ。いっそ......?
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