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「さぁな。見た事が無いのでな」
素っ気なく返された答えに、錦の眉間へ皺が寄った。
「狡いよ、其れ」
そんな可愛い錦の反応に、一刀は微笑む。
「そうだな……驚きはするだろう」
言いながら、拗ねる錦の頬を軽くつついてやった。此れに、錦は更に問いたい事を。
「じゃあ、もう一人の私が一刀へ思いを寄せたら……?」
其の表情は、真剣だった。一刀はどうするのだろう、もう一人の己へ。答えを聞くに、少し緊張があった。しかし、一刀は眉一つ動かさず。
「俺には錦がいる。其れに、其の者は似た者であって、錦では無いだろう」
即、答えにしてくれた。一刀が愛してくれているのは、今目の前に存在する己だけ。錦は、己で問うた事だと言うのに妙に照れてしまった。其れを誤魔化すように、苦笑いを浮かべる錦。
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