瓜二つ。

12/19
前へ
/123ページ
次へ
「何だよさっきからっ……どうしてそんなに他人行儀なのさ……意地悪なら怒るよ。此方へ来て欲しいけど、私が行っても良いなら行くよ?」  此の提案を、何より待っていたのは。 「どちらでも宜しいので、早く決めて下さいませ、錦様……辛(つろ)う御座います」  嘗ては植木のみで隔たれていた、後宮の庭。何を思ったか、一刀が突如高い囲いを造る様に命じたもので、其れ以来こんな役回り迄頂く事となった時雨。錦を肩に乗せ、低い声にて。 「一刀、何方か決めて!時雨が可哀想だよ」  時雨を案じるかの様に、一刀の判断を伺う錦だが。 「錦様の御用命にて、こうして居るのですが……」  時雨は、突っ込まずにいられない。取り敢えず、そろそろ降りないかと。一方の叢雲は、何故かよく分からぬ判断を迫られ、戸惑う姿。 「す、好きになされては……?」  と言うしか無いだろう。が、錦は叢雲を睨んでいる。 「止めてくれよ、其の言葉使いっ。いいんだね、出るよ?」  そう言いながら、一度引っ込んだ頭。呆気に取られながらも、思わず吹き出す叢雲。 「何なんだ、あの娘は……」
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

187人が本棚に入れています
本棚に追加