瓜二つ。

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 そう言って瞳を輝かせ美しく微笑む錦へ、叢雲の胸は又苦しい程に鳴る。時が止まったかの様に、只其の優美な微笑みから目が反らせない。思わず、其の美しい笑顔へ触れたくて、手を上げた其の時。 「――錦!」 「えっ……?」  背後より聞こえた、いとおしい声。しかし、何故と。徐に振り返った錦は、あまりの驚きに声が出ない。一刀が、二人いると。側へと歩み寄って来た一刀が、叢雲の胸の中にいた錦の腕を強く引いた。 「いたっ……」  あまりに強く引っ張られ、表情を歪めた錦へ、叢雲の眉間へ皺が寄る。 「乱暴ではありませぬか……!」  叢雲は、一刀の錦への手荒い扱いへ怒りを見せた。其の表情も、声も一刀と同じ。錦は困惑し、一刀の腕の中より只交互に、其の二人の顔を見上げる。錦を己の腕の中へおさめた一刀の眉間にも又、皺が寄った。 「そなたには関係の無い事だ」  強い声。そして、漂う此の何とも言えぬ空気は、息が詰まりそうだ。 「あの……!えっと、一刀……?」  錦が、思い切って声を上げた。確認する様に、不安そうに一刀を見上げた後、叢雲へも目を向ける。
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