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「一刀は、俺だ」
錦へ答える様にそう声にする一刀は、腕の中の錦を更に強く抱き寄せた。其の様に、一刀を睨むかの如く見詰め、拳を握り締める叢雲。
「一刀……とは、そうか。貴方様の御名前でしたね……」
そう静かに言った声も、やはり全く同じ。錦は驚きのあまりに、力の抜けた唇が開いてしまう。又も、声を忘れる。
「叢雲殿、后を後宮より連れ出すとはどういうわけか」
一刀の憤りが伝わる声に、錦が我に返った。慌てて、其の襟を軽く掴む錦。
「ち、違うんだよ!私が、彼を一刀だと思って出て来たんだよ!御免なさい!」
「貴方は、彼女の自由迄を縛りなさるのですか?」
謝る錦を見詰める叢雲。一刀は、其の言葉に冷たい視線を向ける
「『彼女』だと……知らぬのか、我が后妃は男子である」
「お、男子……后妃……」
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