能面の下。

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 通常の公務に加え例の審査等々、一刀は勿論、東皇家筆頭各等も目を回しそうな程に多忙であった。  其の日。隠密へ情報収集を命じた霞が、一刀へ拝謁を願い出ていた。一刀の御前にて、拝する霞の姿。 「面を上げよ」  許しを得、拝した身を徐に起こした霞。一刀と同じく、冷たくも美しい容顔は神妙であった。 「どうであった」  促され、霞は一刀へ一度頭を下げる。 「は……隠密を藍の地へ派遣しました処、叢雲殿の御母堂が、藍の地以前に西に居た可能性が浮上致しました」  一刀の眉間へと皺が寄る。先日久遠より聞いた情報から、ひとつの場所へ留まって居るとは思うて無かったが、まさか西とは。しかし、叢雲の母に関する書類は殆ど情報は無いと久遠は言うていた筈。 「西だと……書類はあるのか?」  一刀の追及に、霞は少々難しそうな表情を示した。 「其れが、久遠へ確認しても御母堂の記録には一切……ですので、更に遡り其の母君の書類を調べてみたのです。其処で、西への出国記録と帰国記録が見つかりました」
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