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責任政党
こういう小さな党と議会を運営する政党を相手に一触即発の関係が続いている。そんな中で「いのち」という政党が頑張っている方だ。
「政府だけが助かるならいいのですが、政府の監視役たる市民団体も皆、責任のなすりつけで、その責任者を律する責任者の人も、何か理不尽なことが起きるのは当たり前です。政府は自らが犠牲になったら何か責任を取るというだけで、何もしない。結局は皆平等だったらいいのに、と思うのです」
日本共生党副幹事長で国対委員長の湯田が言う「責任のなすりつけ」とは、「他罰的」でも「自己責任の放棄」でもなくて「政府を責める権利」のことで、そういう発言者を批判するときには必ず『責任のなすりつけだ』と揶揄される。それはただの罵倒句であって真の「責任のなすりつけ」は違う。
永田町の日本共生党本部応接室。ザマ美ことネットメディア「乙ちゃんねる」記者、狭間美子はボイスメモを取っていた。
「でも乙ちゃんねる民は野党も批判ばかりで何もしないと言ってます」
湯田桐生之介は穏やかに反論した。
「何を言い出すのです。責任のなすりつけとはそういう発言者の個人の主張であって本質的ではない。それこそ責任のなすりつけである」と説明した。
ここで「責任のなすりつけ」を責任の不在を糾弾することではなく、「責任のない所」に「責任ある」野党が斬り込んでいく意味だと理解されることを求めるなら日本共生党の思想を受け入れようという動きだが、広がっている。
「ネットユーザーは周回遅れだというのですか」
狭間美子は雨後の筍のように伸びる日本共生党スレを液晶画面に映した。
「いや、今は真の『責任なすりつけ』の方が受け入れている方は多いだろう。
と、湯田は調査資料で切り返した。機関紙白旗の最新世論調査だ。彼の言う通り真逆の結果が出ている。
「いや、責任のなすりつけには結局どこにも責任はなしと言うことになります。そういう意味なら右から左へ責任のなすりつけ。無責任のロンダリングという方が合っているでしょう」
そう座間は斬り込んだ。
「ぐぬぬ…」湯田が脂汗の滝を流している頃、情弱は冷や汗を垂らしていた。
同じビルの地下にある白旗大規模データセンターでキーボードを叩く。
世論調査の結果は極秘だ。二重三重に暗号化されクラウドに分散している。
その断片を情弱はやっとの思いでつなぎ合わせた。だがパズルのピースが揃ったところで全体像の抱える問題が浮かび上がった。
「どこだ。どれが本物なんだ?」
情弱は濡れた指でカチャカチャ連打する。微妙に似た設問がいくつもあり選択肢が矛盾している。
イエスともノーとも言えないがどちらかというとイエス。
イエスとは言い切れないが断言することも難しい。
こんな歯切れの悪い選択肢が並んでいる。
『ちょっと情弱…いつ終わるのよ』
インカムがどやしつける。応接室の陽動作戦は時間切れになりつつあった。
『だってザマ美さん。本命のファイルが見つからないんですよ』
情弱の打鍵速度がレッドゾーンに入る。
短い舌打ちが前奏だ。お小言の主題が始まった。
『あのねえ。だったら、最初から無いんでしょ。【中身】が』
それを聞いて情弱はピンときた。端から責任政党の役を放棄しているのだ。
「責任のなすりつけを批判することで責任のなすりつけよりも劣っているという主張が行き過ぎるかも知れないが、責任のなすりつけはどこを批判しても変わらない。この党自体に責任はなし」
情弱はファイルを閉じた。
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