第1話

1/1
528人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

第1話

「おめでとう、こりゃ懐妊だ!」 ……はあ!? 人間、驚いた時は目が点になるってほんとなんだな。 いやあ、今日はひとつ賢くなったよ、うん。 ……じゃないだろ! 「俺もついにじいちゃんかあ。『じぃじ♡』って呼ばせて……」 「ちょっと待てよ、おっさん!このヤブ医者!」 「失礼な!ヤブじゃねえ!」 「俺はただの風邪で来たんだよ!」 そうだ! この筋金入りの医者嫌いな俺が医者に来てんだから、今回の風邪はそれなりに辛かったんだよ! 胸がムカムカしたり、頭がフラフラしたり、かと思ったら食欲増大したりな! 「それなのに妊娠だあ!?ふざけんな!」 「ふーん……?」 「な、なんだよ!」 「じゃあ青生(あおい)には、心当たりはまったくないってんだな?」 「……は?」 「一度もそんなことした覚えはないってんだな?そういうことは!一度も!」 「うっ……そ、それは!」 そ、そそ、そりゃ、俺だって男だから? 好きな相手とか、恋人とかいれば、そういうことしちゃうし? むしろあんな絶倫野郎が相手だったら、毎晩だってしちゃうし!? でも、まさか。 まさかこんなことになるなんて思わないじゃん! 「うううぅぅぅぅ……!」 「たくっ……とにかく、こんな大事な診断間違ったりしねえから、早く相手に伝えて喜ばせてやんな」 そう言って、おっさんは俺を追い出した。 めでたいことだから金はいらねえ、とか珍しく太っ腹なこと言いやがって、ヤブ医者め。 「……ハァ」 マジか。 マジなのか。 マジで、この腹の中になにかいるのか? アイツと俺のガキが? それでもって、アイツが、 喜ぶって? 「んなワケないだろ……」 最悪、堕ろせって言われる……か、良くて逃げられんのがオチだ。 そうなるのが分かってて、ガキができたなんて、 「……言えるかよ」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!