Cave?

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Cave?

 ペタッ  両の頬側面にひんやりとしたものを押し付けられて目が覚めた。   目を開けていると思うのだが、視界はゼロ。いつも通りの真っ暗闇だ。 「起こしてしまったようだね。まあ、今日はいつもとは違う感じだから、起きててもらわないとねブッフフフ」  たまに聞く声。少しエコーがかかった感じで中性的な声。なぜかいつも最後は吹き出すような笑いが入る声。  覚醒した途端に足指に虫が這いずるむず痒さを感じる。ここは虫が多い。  ピチャンとかチャポンとか水滴が落ちる音がする。水滴の音に交じって、ゴポゴポと液体の中に泡が上っていく音が聞こえる。水の溜まった場所があり、そこに何かが湧きだしているのか、それともその水が腐ってガスが発生しているのか。  両頬だけではなく、空気自体がひんやりとしているここは、多分洞窟なんだと思う。以前、声の主に、そうなのかと聞いたことがあり、その時は否定も肯定もせず無視されたが、恐らく正解だったのではないだろうか。  視覚が一切意味をなさない中、立っているのか寝ているのか座っているのかもわからない状態で、結構な時間、いや、結構な日数を身動きができない状態でいる自分がよく発狂しないもんだなと、今も冷静に考えている。  ひんやりした両頬の何かを頬を膨らませたり凹ませたりして様子を探ると、何か『固くて平べったいもの』と推察した。  起こしてしまったと言った以降、一切言葉を発さないが、私の頬に当てられたひんやりとした固く平べったい何かは、その人物が押し付けていると思われる。そういえば、さっきの声は背後から聞こえた。という事は、私は今、背後がある状態、立っているか座っているか、そういう状態なのか。  この空間には、石や砂から発するような、何というか地面のニオイとでもいうか、そういうニオイの中に、果物の発酵臭やハムやチーズといった動物性の発酵臭、植物の青臭さが混ざったニオイが漂っていた。洞窟だとすれば、貯蔵庫として使っている可能性もあるので納得はできる。 とにかく、私はそういう所に、ここしばらく監禁、拘束されているのだ。
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