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What is this?
声の主が相変わらず何も言わないので、両頬のものをもう少し詳しく推察してみようと思う。身動きも視界もない私が楽しめる?事は、もうこういうことぐらいしかないのだ。でもこういうことをやっているからこそ気が触れずにいられるのかもしれない。
まず、ひんやりとしている感じから、多分鉱石的なものか金属的なものかなと思う。石のようなものなら、洞窟にはいっぱいあるに違いない。それらを拾って私の両頬に当てているとか。何のため?私を起こすための悪戯だったのか。しかし、石にしては表面がいささか滑らかすぎる。頬から伝わる感覚でしかないが、ザラザラする感触がまったく無い。なにかツルツルに加工されたものではないかと思う。大理石や御影石を研磨した様なものなのかもしれないが、それは何なのだと考える。そういう材質でできた平たいものといえば、例えば調理器具類の、まな板や、めん台なんかがあるが、頬のモノはそんなに大きくはない。感覚で言えば、かまぼこ板ぐらいのサイズだ。
平たくはあるが、厚みはどうなんだろう。厚みを推察することは、頬の感覚だけでは無理だ。ただ、石にしろ金属にしろ、厚みがあると当然重くなる。目が覚めてから、かれこれ15分程過ぎたと思う。重いものを持っているとすれば、プルプルしたり、持ち替えてみたりという、疲労からくる腕の動作が頬からも読み取れそうなものだが、そのような気配はない。となると薄く軽いものなのだろうか。
視覚を遮断されている分、聴覚や嗅覚が通常より敏感になっているように思う。その敏感になった嗅覚が微かに血のような、或いは錆の様なニオイを感じ取っている。このニオイ、石よりも金属を思わせる。
一旦情報をまとめよう。
・平たくツルツルに加工されている。
・大きくはない
・恐らく薄い。
・あまり重くはなさそう。
・材質は多分金属。
……?…これ、ひょっとして……
ひんやりを越えて、キンと心臓が凍えた。
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