祇園さんと親友になるまで

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「やっぱりだ」 田中君は廊下を歩きながら憤った。 「やっぱり、十條とできていた」 「そうかな?」 私には違和感があった。祇園さんは楽しそうにしていたが楽しんではいないように見えた。 「まるで、仮面をかぶってる見たい」 「仮面?」 心の声が漏れてしまって田中君がそれに反応した。 「ペルソナってやつ?」 「なにそれ」 私が訊くと田中君は「なんでもない」と誤魔化した。 「そういえば、田中君はなんで美術準備室に行ったの?」 「美術部員だから」 「そうなんだ」 そんな事実初めて知った。クラスの人のそういったことを私はほとんど知らない。 「美術部は僕以外全員幽霊部員で、多分来年には廃部になると思う」 「大変だね」 適当に言うと「九条さんは部活入ってないよね」と言われて戸惑う。 「今はちょっと」 帰宅部の私は代わりに放課後誰かと遊ぶこともない。だったら、クラブに入って青春を謳歌すればいいじゃないと言われるかもしれない。けれど、私は誰にも指示されることのないこの時間を大切にしていきたい。 そう思った。
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