祇園さんと親友になるまで

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週明けの月曜日の祇園さんの昼食はカレーうどんだった。 屋上のベンチに座ってどんぶりを片手で持って音を立ててすすっている。カレーが飛び跳ねて制服につくことを恐れていない食べ方に私は恐れて距離を置く。 「やっぱりテーブルが必要ね。手が疲れてきちゃった」 このカレーうどんもカレーライスと同じように学食から勝手にテイクアウトしてきたものだ。 祇園さんは同じく勝手に持ってきたトレイに空になったどんぶりを置くと満足げにお腹をさすった。 奇跡的にも制服にはカレーの汁が一つも飛んでいなかった。 「どうしたの?さっきからつれない顔をして」 昨日のことが気になってる私はそんな表情をしていたのだろう。 「なんでもないよ」 慌てて取り繕うが、祇園さんは私をじっと見つめたまま動かない。 よく見るとまつげがすごく長くてフランス人形のようだった。私は魅せられて視線を逸らせないでいた。 「昨日美術室で」 耐えきれなくて白状していた。 「祇園さんと十條先生が一緒にいるところを見ちゃって」 「そうかー、見られちゃったか」 祇園さんはそう言って大げさに驚いた。 「実は美術部に入ろうかと思って顧問の十條先生の所を訪ねただけなの」 「でも、楽しそうに話してた」 「ほんとは美術部への申し込みだけして帰りたかったんだけど、中々解放してくれなくて、作り笑いをするの大変で、くたくたになった」 そう言われて楽しそうにしていたが楽しんでいない理由がわかった。 「このこと他の人に話した?」 急な真顔で祇園さんは私を見てきた。 「田中君と一緒に見ちゃって」 「え?田中君と?もしかして付き合ってるの?」 「なに言ってんの!」 予想だにしないことを言われて大きな声を出してしまった。 「田中君は美術部員でたまたま会ったの」 ちょっとだけ嘘だけど、詳しく言うとまた何か言われそうだと思った。 「千紘、このこと他の人に言わないでくれる?田中君にもお願いしておいてくれるかな」 「いいけど」 「十條先生は人気者だから、美術室のことが広まったら私、他の女子からどんなこと言われるかわからなくて」 そう言われて納得がいった。十條先生と祇園さんの噂が流れればやっかむ女子も少なからずいるだろう。 放課後、田中君を捕まえて事情を話した。 「そういうことだから」 「でも、十條とキスしてた」 「だから、あれは見間違いだって!」 私が強く言うと田中君は下を向いて苦悶の表情を浮かべているように見えた。 その後、なにも言わず走り去った。 私は田中君の姿が消えるまでなんとなく見送った。
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