祇園さんと親友になるまで

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昨日がカレーうどんだった祇園さんの今日の昼食はカレードリアだった。 「コンビニって便利よね」 私にとっては今更ながらの感想を祇園さんが言って食堂の電子レンジで温めた熱々のカレードリアをスプーンですくって口に入れた。 「おいしい。ほんとコンビニ最高」 祇園さんがこの屋上に来てから、雨の日がない。秋晴れの空を眺めながら祇園さんは晴れ女なんだと確信していた。 「田中君には言わないように釘を刺したから、大丈夫だよ」 「ありがとう。変な噂が立つとクラスで肩身が狭くなるから」 それを聞いてなんだか意地悪をしたい気持ちになった。私はずっと肩身が狭いままクラスのみんなに押しつぶされていた。 「でも、キスをしたのはほんとだよね」 「え?」 不意の言葉に祇園さんは一瞬驚いたけどすぐに平静を取り戻した。 「なにいってるの。十條先生と会ったのは昨日が初めて」 「田中君でも祇園さんみたいな人を見間違うはずない。祇園さんはそれだけ明白な人だから」 みんなの中にいてそこだけ明るい。祇園さんだけがはっきりと存在している。田中君だって私と同じように見えてるはずだと思った。 「私のこと全く覚えてなかった人だっているわ」 急に祇園さんが暗く押しつぶした声で呟いて、私は自分の言ったことを後悔した。 「ごめんなさい。昔のこと思い出しちゃって」 昔に何があったのか気になって訊こうとした時、「嘘ついてたの」と謝られた。 「本当はキスしてた、というか無理やりキスされたの」 「それって!」 立ち上がる私に祇園さんは「黙っててくれない?」と優しく囁いた。祇園さんの顔は私のすぐそばにあって鼻息が届く距離だった。 だから、私は必死に息を止める。 「先生とキスしたなんて学校に知られたら私の家厳しいから多分転校になる」 「でも」 「せっかく千紘と仲良くなれたのに、別れたくないの」 祇園さんの顔が目の前にあってこのままキスされてもおかしくないと思った。 顔を仰け反らして視線をそらす。 「なに赤くなってるのよ。乙女なの?」 「乙女じゃない!」 そう言った後で頬に手を当てる。 本当に赤くなってるんじゃないかと思った。 「リンゴみたい」 祇園さんが笑った。 「リンゴじゃない」 祇園さんがまた笑って私はふくれ面になった。
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