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嘘の城
駅を降りると目の前に郵便局、ドーナツ屋、その奥にはイズミヤがあった。
書いてもらった住所を辿ると近鉄の高架下をイズミヤとは反対方向に進んですぐの所に、祇園さんの家があった。
「本当にここなの?」
住所には部屋番号があったから、一軒家じゃなくてマンションなんだと思っていたが、このマンションは二階建てだった。
かっては白かった外壁が、煤けたような色になって小さなヒビが所々に見える。
青色に塗られていたであろう階段のペンキははげて錆びた鉄をむき出しにしていて、のぼるとカンカンとうるさい音を立てた。
「201」と書かれた表札の下に名前はなく、扉は高橋先生が軽く殴れば、穴が空いてしまうようなもろい作りだった。
呼び鈴を押すが、中から音が響くことはなく、私は立ち尽くしてどうするべきか考えて、とりあえずドアノブを握ると、扉が開いてしまった。
足を踏み入れると少しカビ臭い匂いがして立ち止まる。あまりにも小さな玄関にたった一足だけ靴が置いてあった。
西陽が眩しいその中に布団から起き上がる姿があった。
「どうしてここに来たの?」
そう祇園さんは言って、私は「親友だから」と答えた。
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