最後の親友

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最後の親友

次の日にいつものように登校してきた浅子をクラスの何人かが取り囲んで、「お見舞いに行けなくてごめんね」なんて口々に言ってる姿を見て一人だけお見舞いに行ってしまった私は優越感に浸って窓から雲行きの怪しい空を見た。 ここにいるクラス全員の中で浅子があんな所に一人で住んで、コンビニでアルバイトしてることを知っているのは私だけだろう。誰も浅子の本当を知らない。 私はなんだかおかしくて笑いそうになる口元を押さえた。 「九条さん昨日、伏見駅の近くのコンビニにいませんでしたか」 いつの間にかすごく小さなクラスメイトが机に座っている私の前にいた。ほとんど会話をしたことのない四条さんが話しかけてきて私は戸惑った。 「そうかな」 「昨日コンビニにいましたよね」 「そうかも」 「その後、祇園さんが住んでるぼろアパートに行きましたよね」 「え、なに?」 思わず席から立ち上がって小さな四条さんを見下ろした。それでも四条さんはひるまなかった。色んな人から見下ろされ慣れてるのだろう。 「行きましたよね。あのぼろアパートに」 「ちょっと」 腕を掴んで強引に教室から連れ出した。浅子を含むみんなが私達を見ていたかもしれないが構わなかった。 「痛いです」 廊下に飛び出し中廊下まで進んだ頃、四条さんは私の手を力一杯振りほどいた。 「赤くなってるじゃないですか」 四条さんは袖をまくって赤くなった部分をさすった。 「なんで知ってるの?」 「たまたまです」 「たまたまじゃないでしょ」 たまたま、浅子の家を知っていたなんてありえない。 「もう、ホームルーム始まりますよ」 そう言って教室に帰ろうとする四条さんの腕を掴んだ。 「放課後、屋上で。逃げたら何するかわからないから」 「ひっ」 そう叫んで四条さんは逃げていった。これは、放課後来てくれないなと思いながら、どうしようかと悩みながら教室に向かった。 教室に入ると数人のクラスメイトが私に注目して四条さんが友達に抱きついて泣いていた。 不快な視線が私に浴びせられていた。 「ちょっと、風子が泣いてるじゃない」 佐藤か斎藤か忘れたけど、四条さんに抱きつかれている女子が噛み付いてきた。 「九条に意地悪されたって」 「祇園さんの悪口を言ったからよ」 私の言葉に教室はざわめき出して、中心にいる浅子を見た。 浅子は私を一瞥して「え、そうなの?四条さん」と四条さんの方を責める眼差しを向けた。 「風子、そうなの?」 佐藤さんか斎藤さんかわからない人が四条さんを見た。 「四条さん、私のこと嫌いだったんだ」 うなだれる浅子に「どういうことだよ、四条」と男子から声が上がった。 「四条さん、どういうことなの?」 クラスの女子からも声が上がって、四条さんと佐藤さんか斎藤さんかわからない人も震える中、担任が「うるせーぞ」と怒声を吐きながら教室に入ってきてホームルームが始まった。
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