最後の親友

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クラス中が中途半端な気持ちで高橋先生のホームルームを受けて中身のない時間が過ぎ去った。 「四条さん、私の家知ってたんだ。どうやって知ったんだろ」 昼になってカツカレーを食べる浅子が疑問を口にして「家に帰る浅子も後ついてきたんじゃない?」とお弁当のおかずを掴んだ。 「それってコロッケ?」 「カニクリームコロッケだけど」 「私のカツ一切れと交換しない」 「いいけど」 そうして交換したカツはカレーまみれになっていてお弁当の炊き込みご飯がカレー味になってしまった。 「おいしい」 浅子はカレーにとっぷりとつけたカニクリームコロッケを満足そうに食べていた。 「浅子ってカレー好きなの?」 「好きだよ。将来インドに行きたいと思ってたぐらい」 そう言って浅子は最後の一口を運んで満足げに笑う。 「今は行きたくないの?」 「えっと、そうかな」 急に笑顔が消えてうやむやな返事になった。私は良くないことを言ってしまったんじゃないかと思った時、「いろいろあってね」と笑われて深く追求できなくなった。嘘つき姫ならこういう時こそうまい嘘をつくべきだと思った。 「四条さんには悪いことしたね」 今更ながら、そう言う浅子に「放課後この屋上で会う約束してるの」と話すと「来ないでしょうね」と私が思ってるのと同じ事を言った。 「とりあえず、放課後、ここで1時間ぐらい待ってみる」 「私も一緒に待とうか?」 「二人だとまたおびえるかも」 「そっか」 浅子は笑って、空になったカレー皿を名残惜しそうに眺めた。 「二対一は卑怯だよね」 「対決するわけじゃないよ」 「あ、もうこんな時間、学食に食器返しに行かなくちゃ」 浅子は腕時計を見て立ち上がった。 「そういや、浅子って他のクラスの女子とかに一緒にお昼しようって言われないの?」 学食の列に並んでいる浅子にクラスメイトが声をかけないわけがない。4時間目の授業が終わった時、浅子に声をかける女子を横目に屋上に向かった私の後からいつも来ていた。 「えへへ、実は他の女子に千紘とここでお昼を食べてること言っちゃってたりして」 後半トーンダウンした浅子の言葉に私は絶句した。 「みんな知ってたんだ」 「ごめんなさい」 みんなが知っていて私だけが知らない。 何という孤立感だろう。心がざわついた。 「千紘」 「浅子は悪くないよ」 自分から孤立したのに浅子を責めても仕方ないと思った。 私を見て続けて何か言おうとしてる浅子が言葉を発する前に午後の授業開始を報せるチャイムが鳴った。 「浅子、急がないと」 まだ、何か言いたそうな浅子を促して私達は屋上を後にした。
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