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私と親友の終わり
金魚は泣かない。私は泣いている。
金魚鉢に入れられたたった一匹の金魚が寂しく泳いでいる。漂いながら、辺りを見回してる様子に「もう、仲間はいないんだよ」と呟いて餌を落とすとさっきとはうって変わってパクパクと頬張る姿を見てまた悲しくなって泣いてしまう。
無くしたものはご馳走をテーブル一面に敷き詰められても戻って来ないのに、金魚は欲望に忠実だと私もいっそそうなれたらと思った。
高校1年目の春休み最後の日、私は一つの決意をした。
誰を巻き込んでもいい。ただ、何も言わずいなくなった親友を探し出して抱きしめたい。
そう思って、私は小さな旅をした。
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