泣かない金魚

秋の転校生

彼女と出会って2週間後の事だった。
私の高校の美術教師が雑居ビルの屋上から落下して死亡したというニュースが地元の新聞で取り上げられた。
新聞には「京都市伏見区の雑居ビルから十條楓さん(28)が転落死。事故、他殺両方で捜査中」と書かれていた。
その後の新聞には「被害者の腕時計が無くなっており、物取りの線でも捜査中」と書かれていた。
学校中の騒ぎとなり、クラス全体がお通夜の様相で、なぜか私はその中、ぼんやりとしていた。
人の死に実感が湧かなくて、これは親友が転校した時よりも大事件なんだと思いながら、やっぱりぼんやりとしていた。
そんな中に祇園さんもいた。
私を見て一瞬だけ笑った。
私は戸惑って祇園さんを凝視するけど、すぐに何事も無かったかのように、席について前を見ていた。