祇園さんと親友になるまで

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祇園さんと親友になるまで

転校から次の日の屋上にも祇園さんが隣にいた。 「あのそれ」 祇園さんが学食で見たことのあるトレイにカレーライスを乗っけて私の横に座っている。 「それ、学食のですよね」 「学食のカツカレー、おいしそうでしょ」 確かにスパイシーな香りがするが、問題はそこじゃない。 「なんで、食堂で食べないんですか?」 「九条さんが寂しそうだと思ってね」 そう言ってカレーライスをパクついた。 食後の後のコーヒー牛乳を飲んだ後、祇園さんは言った。 「ひとりは寂しい。大勢はめんどう。だったら、二人ぐらいがちょうどいいんじゃないかってね」 スプーンで皿を鳴らして祇園さんは「足りないよね」と嘆いた。 そう、親友が転校する前はそこだけが温かい居場所だった。その後の夏に入ってから極寒で、秋になってもここはとうに冬なんじゃないかと思えた。 その未来がその一言で覆される。 みんなの人気者なのに私を選んだと言われたような気持ちになった。 食後の祇園さんが空を見ながら口を開いた。 「美術担当の先生、人気なんだってね?」 祇園さんに訊かれて美術の授業を受けてない私さえも口ぐちにイケメンの声を聞く十條先生は教師としてはちょっと派手で、すごく高そうな腕時計をしていた。 「みんなは好きかもしれませんけど、私は苦手です」 「そう」 祇園さんは私に手を振って、「あなたとは親友になれそう」と言って去っていった。 午後の授業のチャイムが鳴る中、私はぼう然としてしまった。
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