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転校してから数日で十條先生とキスをしたと思われる祇園さんと屋上で二人っきりでお昼を食べている。
またもやカレーパンをかじりながら、私のお弁当を見る。
「千紘、唐揚げちょーだい」
急に下の名前で呼ばれて言われるまま箸で唐揚げをつまんで差し出すと一口でほおばった。
「おいしー」
頬を膨らせながら食べる祇園さんは綺麗だけどかわいい。
こんなに綺麗でかわいいなら誰とでもキスできるだろう。
「祇園さんって十條先生のこと好きなの?」
「ん?」
思わず訊いてしまった私に祇園さんはとぼけた表情で私を見た。
「田中君が美術準備室で見たって」
「私、美術準備室なんて行ってないよ。田中君の見間違いじゃないかなあ」
そう言って祇園さんはコーヒー牛乳のストローに口をつけてズズズと音を立てて飲み干した。コーヒー牛乳を一滴も残すまいと何度もズズズと音を立てる様を見て、見た目の割に下品なところもあるんだなあと思った。
でも、こんな綺麗な人を見間違うはずないと思う。クラスの男子なら尚更だ。
「本当に見間違い?」
小さく呟くと「見間違いだよ」と祇園さんは言った。
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