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しかし、連絡先を何一つ交換していない相手にこれほどまでに出会えば、流石に怖くも感じてしまう。とは言え、百瀬会長がストーカー行為をしているとも考えにくいし、逆もまた然りなわけで……。唸って悩んでいると不意に百瀬会長の軽い口調が聞こえてくる。
「もうさ、紫乃ちゃん。ここまで遭遇するなら、お互いにお互いをストーカーって紹介しちゃう?」
「いや、それは困りますって! 百瀬会長はジョークとして処理されるでしょうけど、落ちこぼれな私がそんな発言してしまったら笑えませんって!!」
眉目秀麗で一目置かれた生徒会長に落ちこぼれの後輩がストーカーしていると広がれば、格好のスキャンダルになること請け合いだろう。対して、眉目秀麗で一目置かれた生徒会長が落ちこぼれの後輩にストーカーしていると聞いたところで『逆じゃなくて?』となるのが、関の山だろう。
「それは……。落ちこぼれだから釣り合わないとか言っちゃう感じ?」
全力阻止する勢いで発言する私に向けて、百瀬会長は鋭い眼差しを向けて尋ねてこられる。その時、不謹慎ながら初めて人間らしい泥臭い感情を感じた気がして、何だかとても興奮していた。
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