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ハーレムと聞いて、盛大に吹き出していたことが嘘のように、百瀬会長は神妙な面持ちで考え込まれている。その真剣な表情があまりにも美しすぎて、これ以上ツッコミを入れる行為の無粋さばかりが際立つような不思議な感覚に陥ってしまい、怯んでしまう。
どのくらい待ち続けただろうか。
百瀬会長の表情が不意に緩み、私に向けて視線を合わせてくる。そして、ゆっくりと言葉を紡ぎ始められる。
「うーん、一つだけ確かなことはハーレム願望はない」
「え、そ……そうですか」
じっくり時間を掛けて返す答えのチョイスに思わずズッコケてしまいそうになってくる。なけなしの力を振り絞り、何とか返事はしたものの徹夜続きの試験明けにはヘビー過ぎる会話と言えるだろう。
「だけど」
「?」
「実のところ、物心がついた時から《そういう眼差し》ばかり向けられる生活だったから、知らないうちに所謂ハーレムであることに安堵していたと言っても過言ではないのかもしれない。そう思うと、何だか僕自身も僕がよくわからなくなってきて」
百瀬会長は力なく呟き、ガックリと項垂れている。
いつも余裕綽々な百瀬会長の弱った姿にヤキモキする気持ちが募ってくる。
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