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今まで、百瀬会長にとって有利な流れに持ち込まれるケースが多々あったが故に形勢逆転になったならば、それこそ血湧き肉躍る状態になると思っていたのだが……。思いのほか、百瀬会長の心身を案ずる気持ちが大きくて、自分自身が一番驚いている。
「つまり、百瀬会長にとって女子から向けられる《そういう眼差し》は空気みたいに捉えていたと解釈すれば辻褄が合うんじゃないですか?」
「……え? 空気?」
「《そういう眼差し》を向けられて当たり前、あることが当たり前。ないと不安になるという理屈なら、私が《そういう眼差し》を向けていないことに極度の不安を感じることも理解できますよ? 空気がない生きていけない以上、絶対に不安に陥るはずですから」
自分自身、ハーレムみたいな状況が空気みたいと返されたら呆れ返る自信がある。それにも関わらず、空気に見立てた思考をごり押しするのは百瀬会長にダメージを与える引き金となった《ハーレム》という表現を使った罪悪感に他ならないだろう。そんな私の下心に気付いていない百瀬会長がおっかなびっくり尋ねてくる。
「でも、それってかなり嫌味な感覚じゃないかな?」
弱り果てた百瀬会長に向けて、見せ付けるようにため息を吐くのは酷だろうか。とは言え、見せかけのフォローでは癒せない事実に気付いたならば、もうスッパリバッサリ斬り捨てるしか、方法なんて残されていないだろう。
「百瀬会長、何で《今》そんな常識的思考を発動されるんですか?」
「え、ええええ」
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