06. レボリューション ver.Peach

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***  ……あれから。  百瀬会長と別れ、教室に向けて足早に戻っていく。  色々と不安がないわけでもなかった。だけど、それでも伝えたい気持ちに気付いたからこそ、ただひたすらに突き進んでいく。 「あれ? 佐藤、帰っていたはずじゃ?」  勢い教室の扉を開くと、探していた人物が最後の戸締りを行なっている。  間に合ったんだ……。そう思った瞬間、一気に力が抜けてくる。 「よかった、まだ帰ってなかったんだ。佐倉くん」  息を切らせて語る言葉に、佐倉くんもとても驚いている。それもこれも《よかった》という安堵の言葉を含まれていたからに他ならないのだが、上がり切った息を整えることに精一杯になっていた私が気付くはずもなかった。 「え、うん。戸締りが終われば、帰ろうとは思っていたんだけど……」 「そっか」  黒板に目を向けると、週番当番として《佐伯優希》と《佐倉コウ》の名前が併記されている。通常、週番当番は学級日誌、号令、黒板消し、窓閉め等の雑務が任されるが、慣例として試験期間中のみ雑務が軽減されることとなっている。何やらそこには週番当番の雑務に気を取られ、学生の本分である試験に身が入らなくなることを防ぐ目的が絡んでいるらしい。  というわけで、試験期間中の週番当番には《最終日の放課後、教室全ての窓の鍵閉めを行うこと》だけが任されるため、実は試験期間中に回ってくる週番当番の人気は意外と高かったりする。 「佐伯は部活もあるし、俺が引き受けていたんだけど。よかったな」 「え? 何で?」 「何で、って……。佐藤、何か言いたいことあるんだろ? だから、戻ってきたんだろ?」
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