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「え、うん。まぁ、そうだけど……」
あれ? 佐倉くんに伝えたいことがあるって、言ったかな?
そんなことが過ぎった瞬間、何から言うべきなのか迷いが生じてしまい、言葉が続かなくなってしまう。そんな私の様子をしばらく静かに伺っていた佐倉くんが、おもむろに話を切り出してくる。
「あのさ、さっき。指導力に関する適性評価の結果、出た」
「ど、どうだった?」
気になっていたことの一つである結果の話題が登場し、思わず食い気味に尋ねてしまう。緊張しながら尋ねる私とは対照的に、佐倉くんは実に落ち着いて語ってくれる。
「ん、バッチリ。先生たち、凄く驚いてた」
「ふふふ、だろうねえ。おめでと!」
「ん、ありがと……」
そう返事をしつつ、佐倉くんの態度はどこそこ煮え切らない。ずっと願っていた適正を認めてもらい、幸せの絶頂であるはずの佐倉くんの様子を不思議に思い、声を掛けてみる。
「? どうしたの?」
「いや、佐藤さ。どこまで気付いていたんだ?」
「へ?」
思い掛けない問い掛けに素っ頓狂な声をあげてしまう。そんな私に向けて、佐倉くんはボソリと小さく呟いた。
「……俺の弱点」
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