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「あー……、何か言われた感じ?」
「……何もわかっていない相手を指導すると、レベルを落として語ることも板に付くもんだな、って」
評価項目が見事に予想通りだったことは素直に嬉しい。とは言え、佐倉くんに要らない心労を与えることは本意ではない。
どう答えるのが正解なのか悩みつつ、苦虫を噛み潰したようん表情を浮かべて語る佐倉くんに質問を投げ掛けてみる。
「それで、……いったい何が問題なの?」
私の問い掛けに言葉を詰まらせつつ、佐倉くんは丁寧に語り続ける。
「思い返せば、佐藤は全て《理解していた》。だからこそ《レベルを落とした解説》を自然と誘導させることさえ成功していた。そういうこと、先生の言葉でやっと理解して」
「そんなこと、どうだっていいじゃない? 結果オーライなんだから」
「何言ってるんだ!? よくないだろ!! 佐藤は相変わらず落ちこぼれのレッテルを貼られたままなんだよ? 俺のために先回りしてアシストする能力も実力も持ってるのに、佐藤ばかりが割を食うなんておかしいだろ!?」
そう言って、心底悔しがる佐倉くんを見ていて、素直な気持ちが口を突く。
それはずっと隠していた思いであり、桃ノ木学園に入学した時から墓場まで持って行こうと思っていた信念でもあった。
「あー、やっぱり佐倉くんは良い人だねえ。まぁ、だからこそ思わずアシストしちゃったわけだけど。だけど、佐倉くんが義憤に駆られる必要は一切ないよ。だって、私……脱優等生目指して桃ノ木学園に入ったから」
「ど、どうゆうこと?」
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