21人が本棚に入れています
本棚に追加
「佐倉くんが予想していた通り、私は敢えて力を温存してる。というか、温存するように制御する術を身に付けるべく桃ノ木学園に来たんだよね」
「え、ええええ?」
桃ノ木学園を天下を取るための足掛かりと認識しているケースは最早デフォルト。そして、桃ノ木学園の生徒という最強のステータスを求めるケースも枚挙に遑がないだろう。
いずれにしろ、高みに登ることを生きがいにしている《上昇志向》が大半の校風の中、全速力で逆走するようなアイデンティティを持つ者は間違いなくマイノリティと言えるだろう。
「元々、我武者羅に頑張ることを苦痛に思わないタイプなの。と言うか、ライバルとしのぎを削る戦いとかシチュエーションがめちゃくちゃ大好きで、つい自分の限界超えてまでストイックに努力しちゃうんだよねえ。今まで睡眠不足が原因で病院に運ばれちゃったことが何度あることやら。だけど、やめられないんだよねえ」
「…………」
渾身のやらかしエピソードを素直に語れば、ドン引きした眼差しを返してくれる感性は嫌いじゃない。そんなことを思いつつ、本題に入る。
「努力ってね、日本人は綺麗事に捉えがちだよね。だけど、見境なく努力をしっぱなしで制御不能に陥ってしまう馬鹿も広い世界には存在するわけで。……まぁ、私なんだけどね」
最初のコメントを投稿しよう!