03. ジャスティス ver.Peach

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 即決出来るような良案をバンバン思いつくような卓越した頭脳を持ち合わせているのなら、私自身がそもそもこんな回りくどい生き方をしないだろう。ということくらいは、現生徒会長もそして次期生徒会長に任命されるほどの頭脳を持っている佐倉くんも簡単に理解することが出来るだろうに……。  そんなことを思いつつ、凡人の限界を弁え、今日も自分の為すべき優先順位を念頭に置いて、桃ノ木学園を目指して出発していく。  まるで敵地に向かうような表現だとは思いつつ、学園で最も敵に回したくない相手とクラスで最も敵に回したくない相手に自分から仕掛けていないとは言え、まるで謀反を起こしたような立場になっている以上、一番しっくりとくる表現のような気がした。 「おっはよー、紫乃。てか、課題そんなに難しかった?」 「おはよ、優希。 てか、いったい何のこと?」  特に思い当たることもなく、本気で分からずキョトンと返す私の対応に、優希の方が怯んでしまう。 「え? 課題で出てた地理のワークブックのせいで寝不足になったとばかり思っていたんだけど、原因違うの? まあ、紫乃は地理得意だから、そんな訳ないとも思ったけど」  苦笑しつつ、アホなこと言ってごめんねと言う優希の発言を聞いて、血の気が引いてくるものがある。というのも……。 「え……。地理のワークブックって、今日が〆切だっけ?」 「嘘ー!! 紫乃、忘れてたの? 提出期限、今日の昼休憩終了までだよ!?」 「えええええー。ごめん、優希。今から急いでやるから、マジでごめん。話は後で……」 「それは、別に構わないんだけど」  生徒会長の発言に気を取られて、学生の本分を忘れるとか本末転倒にも程がある。泣きたい気持ちを抑えつつ、やれるだけのことをやる決意を抱いて、地理のワークブックを急いで引っ張り出す。よかった……。今日、地理のワークブック持って来ていて。というか、今日の午後一番に授業があるからこそ、昼休憩終了が提出期限だったんだよね。そんな取り留めもないことを頭に浮かべつつ、残された時間で必死に空白を埋めるべく奮闘することにした。
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