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「……人情味?」
うっとりとした眼差しで語り続ける優希の反応が若干気になり、思わず聞き返してしまう。
「そりゃそうでしょ。首席街道爆進中、さりとて胡麻を擂る必要性もない状況にも関わらず、最下位の紫乃へ試験勉強時間を削ってレベルを合わせるとか、そうそう簡単に出来ることじゃないと思うわよ」
「それは、……思うけど」
「まあ、一部界隈では紫乃はマークされてるみたいだし、平和な学園生活のためには最下位脱出も念頭に入れておいた方がいいかもね?」
「うわああああ、最悪。そっち方面、完璧ノーマークだった……」
頭を抱えて脱力する私に向けて、優希はにこやかに語り続ける。
「ま、別に紫乃の場合。堂々としてたら別段問題ないと思うよ。ただまあ、やる気のトリガーになると踏めば、伝えるのも優しさかなと」
「いや、本当……。そんな最悪な状況ならもっと早く教えてよ……」
「大丈夫、大丈夫。言うほど深刻なわけでもないし。最下位である紫乃を敵視することが鬼畜であると冷静に考えられるほどの余力は皆んな持ち合わせてるみたいだし」
そうは言えども、無闇矢鱈に他人の気持ちを弄ぶような行為は避けたいと思うのが人の性ではないだろうか。今回のように本人が気付かないうちにやらかすこともある以上、気付いた瞬間から全力で避けたい事案と言えるだろう。私がプチパニックに陥っている様子を見ていた優希がまさかのとどめを刺してくる。
「まあ、ここまで落ちこぼれと優等生のインパクトがある以上、下手に距離を取ろうとする方が怪しげに見えるかもね」
「ええええ、そんなこと言われても……。どうしろって言うのよ!?」
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