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01. ジャスティス ver.Purple
***
「また佐藤(さとう)かー」
教室中に響き渡る数学の古賀(こが)先生のため息交じりの呆れた声。
その声を聞き、試験前のピリピリした空気が一瞬だけ和らぐ。
「サトちゃん、ドンマイドンマイ!」
「誰だって、聞いてないことあるし!」
クラスメイトたちが軽いノリでフォローに回ってくれることは日常茶飯事。その反応だけ見れば、とても優しいクラスメイトに恵まれていると思えるだろう。とはいえ、それらの反応は《絶対に自分たちの成績を脅かすことのない存在である》と《私のことを格下に認識》しているからこそ、大らかに受け止めることが出来るとも考えられる。
「……」
確かに些かボーッとして、やる気のなさそうな眼差しで授業を受けていた私自身にも落ち度はある。その点について、注意されてしまうのは致し方がないことと言えるだろう。とはいえ、古賀先生の怒りの源がいったいどの点なのかわからないからこそ、返答に困ってしまっていたわけなのだが……。
「そんな上の空じゃ、何を説明しているかさえ分かっていないだろ?」
「……」
最後まで叱責された原因が分からずじまいになってしまうケースも多々ある中で、怒りの理由を素早く開示される古賀先生は間違いなく良い先生と言えるだろう。
とはいえ、さも尤もな言葉で注意をしてくださるが……。
ぶっちゃけて言ってしまえば、古賀先生が説明している問題くらいは把握している。更に言ってしまえば、例え把握していなかったとしても、黒板に書かれた説明を見るなら、自ずと理解することだって出来るだろう。……と、反論するのは一瞬のこと。だが、それでは今までの努力が無に帰することを理解しているからこそ、私は謝る道をチョイスする。
「ごめんなさいー。ポカポカ気持ちよかったので、ついポーッとしてました」
「……ったく」
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