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04. レボリューション ver.Purple
***
「……さて」
生徒会長の元から脱兎の如く飛び出したところまでは順調だった。勢いよく猛ダッシュを決める私の俊足ならば、点呼にギリギリセーフで滑り込むことさえ不可能ではないと盲信しそうになるほどのものだった。だが、現実は自分の立ち位置さえ把握することが出来ない非常に残念な状況に陥ってしまっていたりする。
「ここ、どこなんだろう?」
統一感を出した建築の見た目は本当に美しいものがある。だが、だだっ広い敷地に似たり寄ったりの建物を乱立すれば、樹海並みの激ムズ迷路にしか思えないだろう。
しかし、無駄に広い敷地をただ闇雲に歩くのは無謀すぎる。とはいえ、授業中に電話をするのも憚られるものがある。さて、どうしたものやら……。キョロキョロと周りの建物の特徴を観察しつつ、困り果てていた矢先。お馴染みの軽い声が空からふわりと降りてくる。
「あれー? 結局、紫乃ちゃんサボったの?」
「百瀬、会長……。何で、ここに?」
「それは僕のセリフだよ。まあ、紫乃ちゃんのことだ。十中八九、迷子になっただけだろうけどね」
「……そんな、私ダメそうに見えます?」
無駄に優しい声色を出しつつ、私に寄り添う発言を行う生徒会長に、思わず弱音を漏らしてしまう。そんな私の発言に、目を丸くしつつ、生徒会長は真摯に受け止め、丁寧に返答してくる。とはいえ、軽い口調とノリはいつものままだ。
「んー、というか。紫乃ちゃんは無駄にジャッジが早いんだよ。必要なことと無駄なことをジャッジするタイミングが。それでいて、一度ジャッジするとなかなか覆らない」
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