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(嫌な奴。傲慢でいけ好かない)
謝ったにもかかわらず、掴まれて尋問されたことに、翔太は不快感を抑えられなかった。
見た目も、中身も、周りの獣人とは明らかに違う。具体的に何が違うかは、人生経験が浅い翔太には分からなかったが、雰囲気で感じ取ることはできた。
彼が醸し出す王族の覇気は、周りにいる全ての者を屈服させようとする。
だが、獅子にも小さい生き物への配慮はあるらしく、力をなるべく入れず、壊れ物を扱うかのごとく翔太に触れていた。毛が生えていない肌も、爪で擦ったら血が滲んでしまいそうで、実は怖かった。
「威勢がいいな、チンピラもどき。俺が誰か知らない奴は、ここの者ではない証拠だ」
「うるせえ、クソライオン野郎。何でも力で解決しようとすんな」
「…………はあ?」
イラッとしたアデルが翔太を壁に押し付け、胸ぐらを掴んだ。
啖呵を切った翔太の胸に、突然“とくん”と何かが訴えてきた。アデルに触れられた部分が、熱を持ったように熱くなる。消えた筈の気だるさが戻ってきて、彼は困惑した。
そこへ、翔太を探しに来たリズ爺が通りかかる。二人の姿を目にして、血の気が引く思いがした。爺は今にも心臓が止まりそうである。
あの翔太のことだ。失礼なことを言った後だろう。
「あ、アデル様、えぇっ、ショータは離れなさい……早く、あああ、ショータよ……」
「この失礼な奴はリズ爺の何だ?」
眉間に皺を寄せたアデルがリズ爺へ問う。明らかに怒っている様子である。
「アデル様、すみません、こいつは、ワシの……孫です……」
「リズ爺、様なんて付けんな。失礼な奴には、呼び捨てでいいんだ」
「ショータ。この御方はアデル王子だ。王族の王位継承第一位の御方でいらっしゃる。お前が軽々しく口をきく相手ではないのだ。ほら早く謝りなさい。とにかく謝るのじゃ」
「あやま、ら、ねぇ…………」
リズ爺が翔太の頭をぐいぐい押して下げさせようとしても、翔太は意地になって抵抗する。
「素直じゃないな。リズ爺、もうよい。しかし、こいつはどこから来たのだ?」
「俺は、日本から来たの」
「ニホン……?なんだそれは」
「分からないから悩んでるんだ。もう頭がぐちゃぐちゃで、何がなんだか分からない……あっついし、フラフラする……お前のせいだ」
駆け寄ったリズ爺を手のひらで拒絶する。
「おい、ショータ、大丈夫か」
「ジジイも触んな」
翔太は熱に浮かされた赤い顔で、その場にしゃがみ込んだ。
さっき掴みかかった時、身体が熱い気がしたのだ。翔太に毛が生えていないためかと思ったら、発熱していたようだ。
実はアデルには、暇でここにいた訳ではなく、列記とした理由があった。だが、翔太の件で、それを追いかける状況ではなくなってしまう。
次の機会にすることにして、アデルは翔太を抱き上げた。やはり驚くほど軽い。
城へ帰り、専属医に診てもらうことにして、爺とその場を後にした。
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