第2章

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「そうだ。一生、その相手としか性交できないし、恋愛も結婚もできない」  一体何を言っているんだろう。  性交?  恋愛?  結婚?  ぽかんとする碧馬にリュカは、さらに丁寧に説明をしてくれる。 「昨日、森で熊族に襲われかけただろう」 「……うん」  そういえば、そうだった。  昨日はあまりに色んなことがありすぎて忘れかけていたが、熊から人になった男たちに乱暴されかけたのだ。 「熊族は嗅覚がとても鋭いんだ。だから通常ならわからない微かなΩの香りに気がついて、あんなことになった」  あの二人は熊族のα男性で、碧馬が放つ微かなΩの香りで誘惑されたのだという。 「誘惑なんてしてない!」  憤慨する碧馬にリュカは真剣に言い聞かせた。 「わかっている。でもこれはΩの特性で、アオバの意思とは関係ないんだ。もし意に染まない相手に襲われてうなじを噛まれたら番にならざるを得ない。そうならないために、これをつけておいて欲しいんだ」  生生しい話に碧馬は顔色を青ざめさせて、じっとリュカを見上げた。自分が襲われる対象になりうると言う事態に戸惑いも感じるし、この世界の価値観を理解しにくい部分もある。  困惑をみせる碧馬に、リュカは懇々と言い聞かせた。   「無理強いされて番になるのは不幸だ。発情期だと妊娠する可能性が高いし、そんな事になりたくないだろう?」 「は? 妊娠……?」  碧馬は理解を超えた単語を聞いて、目を丸くした。  妊娠だって?  それって俺の心配?  するわけない。  それに無理強いされるってレイプって意味だよな?  男にレイプ?  でも昨日そうなりかけたことを思い出す。  ここではそれもありなのか?  いや、そんなことより番だの妊娠だの、一体何の話なんだ?   リュカが真剣な顔で話しているからここまで真面目に聞いていたけれど、碧馬の常識を越えすぎた話に実はこれはまったくの作り話なのではないかとさえ思う。  作り話ではなくても、そもそも碧馬がΩなんてリュカが言っているだけのことだし、とうてい信じられなかった。というより信じたくない。  Ωの特性もよく理解できないし、常識外れすぎて碧馬は何だか腹が立って来たのだ。
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