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「どう? どこまで読めた?」
数日前、ラウリは簡単な本を貸してくれた。日本で言う小学一年生が初めて学ぶ国語の教科書みたいなもので、とても役に立った。
「あ、あれ、すごくわかりやすい。文字も大きいし、絵もいっぱい入ってるから」
「そう、よかった。もしわからないところがあれば訊いて」
「ありがとう。あ、そうだ、読めない字があったから、今度教えてくれる?」
「いいよ、じゃあ、次の休みの日にでもゆっくり教えようか? よかったらうちに来る?」
ラウリがそう申し出たとき、後ろから声が掛かった。
「こんなところにいたのか、ラウリ」
振り向くとガルダが立っていた。なぜか険しい表情だ。
「グージョンが探しているぞ。午後の約束だったのにって」
「あ、すみません、すぐ行きます」
あわてて立ち上がるラウリにガルダは厳しい声を出した。
「ラウリ、午前中の相談はちゃんと時間内に終わっていたはずだよな? レックは昼前に帰ったと思うが」
「あ、いや、はい。レックの相談内容をまとめるのにちょっと時間を食ったんで、昼が遅くなったんです」
ラウリは気まずい顔でそう言って、身を縮めた。
「そうか。この前もそう言ってずいぶん遅い昼になったようだけど、昼からの相談者がラウリがいないって探していたから、休憩はちゃんと昼に取れよ。それとも、わざと昼を贈らせているのか?」
そう言いながら、隣りに座っている碧馬にちらりと視線を走らせた。ラウリはあわてて首を横に振る。
「いえそんな。そんなことはしてません」
「そうか、それならいい。持ち場に戻れ」
「はい。……アオバ、客が来てるから、またね」
「うん。頑張ってね」
ガルダの言葉は早口で、碧馬にはほとんど聞き取れなかった。でも声の調子から何となく怒っているのかなというニュアンスだけは感じ取れた。
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