第3章

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 え、なんでここでリュカ?  ラウリと同じく、碧馬にとってリュカも頼りになる兄的な存在だったはずだ。だけど明らかにラウリと違う感情が湧いて、碧馬は困惑した。  リュカには構ってほしいと思ってしまった。動揺して黙り込んでリュカを見上げたら、リュカはじっと碧馬と目を合わせて言った。 「ああ、そうか。俺にも言いたかったか?」 「え、何を?」 「髪を触らないでって」 「そんなの、言うわけない!」  思わず強く否定してしまい、かっと顔が熱くなった。  リュカの気持ちはわかっている。はっきり好きだと言葉にされたことはまだないが、リュカの態度はいつも恋愛の熱量が伝わってくるものだったから。  でも気持ちを告げられたことも返事を求められたこともなかったから、何も起こらないと思っていた。だって相手はケンタウルスなのだ。いくら好きでも恋愛相手になるはずがない。 「そうか。それならよかった」  リュカはそれ以上何かいう事もなく、手を伸ばしてそっと碧馬を抱き寄せた。ハグなら何度もされているのに、今さらながら心臓がバクバクと大きく鳴った。 「混乱させたのなら悪かった。ただ心配しているだけなんだ」  耳元で囁くように言うから、ますます頬がカッカと熱い。ガルダがほほえましそうな笑みを浮かべていて余計に居たたまれない。 「ちゃんと言えるから、心配しなくても大丈夫!」  碧馬はそう叫んで、逃げるように執務室を飛び出した。  その夜ベッドの中で碧馬は考え込んでいた。  碧馬には兄がいる。二つ上の兄とは結構仲がよかった。よく一緒にゲームをしたりマンガを貸し借りしたり、もちろん言い争いも取っ組み合いのケンカもした。  ……もう会えないのかな。  寂しくなる前にあわてて思考を閉じる。元いた世界のことや家族のことはなるべく考えないようにしていた。思い出せば切なくて悲しくなるだけだからだ。  それより、今日の話だ。  髪を撫でる意味を知ったからにはラウリにはなるべく早く、はっきり言おう。今まで知らなかったけど、みんなを誤解させるみたいだから髪は撫でないで、そういう言い方なら平気かな。  でも、と碧馬は思う。  同じことをリュカには言いたくない。  二人とも優しくしてくれて兄みたいだと思っていたのに何が違うんだろう。やっぱりリュカは特別なんだろうか……。  リュカが好意を持ってくれていることは気づいていたけれど、自分のほうはどうなんだろう。  そんなことを考えているうちに眠りに落ちた。
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