おだてぶた

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おだてぶた

「あ、おだてぶた がきたよ。」 私の地獄耳は、こんなことを言っているバイト先の同僚たちの声をしっかりとらえた。 おだてぶた、とは まぎれもなく私のことだ。 私が軽く同僚たちを睨むと 彼女たちは、知らない顔をしてケーキセットを作り始めた。 ぶたもおだてりゃきにのぼる。 ゆうま が来てから、私はまさにおだてられたブタ、おだてぶた状態になっている。 自分でも自覚はしていた。 ゆうま って すごい。 わざとらしい誉め言葉も、彼のキラキラの瞳を見れば わざとらしく見えなくなってしまう。 ゆうま におだてられて、無自覚にいい気分になっているのか、私が率先して仕事をがんばってしまっている状態に同僚たちも気づいていた。 今日は8月10日。 実はまだ店長に、ここを辞めることを伝えていない。 なぜだろう。 ゆうまにこの間こんなことを言われたからだろうか。 「先輩、 やめないで。 僕が がんばるから。」
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