1人が本棚に入れています
本棚に追加
はじまり
「全軍、突撃ッ!!」
合図と同時に後方に控える大軍が動きはじめた。
しばらくして、前方から迫ってきた大軍と衝突した。
というのは、すべて俺の妄想だ。
実際は、信号待ちの人々の先頭に立ち、信号が青になった瞬間に、突撃の合図を叫ぶ俺を見て笑っている大勢の他人の姿が見えていた。
大学生の俺は、なかなか就職先が決まらず、むしゃくしゃしていて、つい心の中ではなく、声に出して叫ぶという醜態を晒してしまったのだった。はじめて声に出した感想は、想像以上に恥ずかしかった。今すぐここから立ち去ろう。などと後悔してると、交差点の真ん中に甲冑姿の男が立ってるのが見えた。ふとその男と目が合うと、その刹那、俺は刀で斬られていた。
血が止まらない。痛い、痛い痛い痛い痛い、俺は、死ぬのか。怖い、嫌だ嫌だ嫌だ、死にたく、ない。
意識が遠くなっていくなか、男は俺に何か話していた。
「……の…だ。……ぞ」
最初のコメントを投稿しよう!