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姫様の声がして、僕は大きく深呼吸をしてから部屋に入った。
入った瞬間目に入ったのは、暖かい日差しが射し込む大きな窓だった。
風によって揺れるカーテンはさくら色をしている。
部屋からは花のいい匂いがした。姫様の匂いと同じだと思った。こんなことをいうと変な人のように思われるかもしれないが。
今日の僕の仕事は姫様の部屋の掃除。
片付けるのが苦手なのよねぇと姫様はよく笑っていたが、
「これは……なかなか……」
見渡すと足の踏み場もない。床には服や本や、枯れた花が散乱していた。
「ちょっと汚れてて、落ちてるものは全て捨てていいわ」
てへっと笑う姫様に
「お任せください」
僕はさっそく掃除を始めた。
床に落ちているものを拾うだけでも時間がかかりそうだ。
できるだけ手際よく拾っていく。枯れた花やゴミはゴミ袋に入れられるが、服や本はそうはいかない。
しかし、姫様に捨てていいといわれたので、とりあえず別の袋の中に詰めていく。
姫様はベッドの上に座って僕に何も言葉をかけることなく、ただじっと見ている。
「……そんなに見られると恥ずかしいんですけど」
「敬語」
「あ。恥ずかしいんだけど……」
「だって、動いてるのがマルコスだけなんだもん。見てて楽しいもの」
心底嬉しそうに笑うので、やめてくれとも言えなかった。
「あの、本とかも捨てていい……の?」
「うん、だって部屋に入らないんだもの」
「……わかった」
まだ着られるもの読めるものばかりなのだが、そこは姫様と言ったところか。
ものに対して執着心があまりないのか、捨てる量が多すぎる。
僕が今まで見てきた中で一番たくさんの服や本だった。
いや、僕の持っている服が少ないだけなんだけれど。
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