掃除人の告白

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廊下に出したゴミは4袋と箱1つ。うんとこしょ、どっこいしょと運びながら廊下を進む。 全て捨てていいといわれたが、なんだかもったいない気もする。こっそりもらってはダメだろうか。 例えばこの本なんか、面白そうだ。 さすがに服はもらわないが、本くらいもらってもいいだろう。 僕は袋に詰めた本の中から一番分厚いものを手に取った。 それをそのまま長い廊下に面している自分の部屋の中に突っ込んだ。 「よしっと」 ゴミ捨て場についた。 ゴミはゴミ捨て場ですぐに燃やすことになっている。 一番燃えやすそうな本の袋に火をつけた。本からは一瞬で高い火柱があがり、ぱちぱちと音を立てて燃えていく。本当にもったいないと思う。 しかし、命令なのでその日の中にぽんぽんと他の袋を投げこんでいく。 最後に残ったのは箱だった。両手で抱えきれるくらいの箱。 中はあまり入っていないのだろう。とても軽くて中からは、からからと音がした。 僕はなんとなく興味がわいて、箱を地面に置いた。 姫様からは中身は確認しなくていいといわれた。 ということは大事なものは入っていないのだろう。 しかし、見た目にはとても立派な箱だ。僕が悪い人間ならこのまま街に持っていって売ってしまおうかと思うくらいだ。 まあ、さっき本をこっそりもらってしまった身ではあるけれど。 箱には鍵はかかっていなかった。開けてみると―― 「なんだこれ……」 中に入っていたのは、 ぼろぼろになった布と、 光り輝く指輪が一つ。
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