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私たちは座敷に場所を移した。 透はくつろいだ様子で部屋の中や外の庭を見回している。 透が微笑んでくれたのは、正直に嬉しかった。でもそのゆったりとした雰囲気に対して、ガチガチに緊張している自分を比べて、またどうしていいかわからなくなった。 しばらく言葉を交わさなかった。 持ってきてよかった。 私は桃にそうっと包丁を入れ、ゆっくりぐるっと一周した。 透もその私の挙動を見ていた。手元に視線が注がれるのを感じる。 本体をひねって種を取り、そのあと等分して、皮を剥いた。大して手も汚れなかったが、きれいに八等分された桃は、甘い甘い水分をたたえているのが見て取れた。 今までどうやって話してたんだっけ。どんな顔をして、透の隣にいたんだっけ。 こわばって口角が下がっていることに気づき、慌ててきゅっと上げた。 長い沈黙のあと、透は母が置いていってくれた麦茶を一口飲んで、少し嬉しそうに言った。 「この家は全然変わんないな」 そう。変わらない。透は嬉しそうだったが、一年前から気持ちが全く変わっていないことを目の当たりにした私にとっては、あまり嬉しい言葉ではなかった。 「いいなあ、新しい家。私も新しい家に住みたいなぁ」 「エアコンの効きがすごい良い」 「うちほんと暑くてやばいよ……?」 透の家は数年前に建て替えたばかりだ。箱が変わらないと、中にいる人間もアップデートされない気がする。 この桃ですら、来年はないという変わり目にあるのに。  等分した桃を食べながら、私は尋ねた。 「最近どう?」 「なにが?」 「彼女とうまくいってる?」
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