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「それで佳奈は……」
心配しているのだ。幼馴染が、おかしな男に捕まって、不必要なダメージを負っていないか。
そのくらいわかる。伝わる。伝わるくらいの時間を過ごしてきたから。
でも、私にだってプライドはある。そんな心配をされるのは心外だ。
「付き合ってないよ」
私は笑おうとした。
「付き合ってない。お祭りもね、誘われたけどね。2人で行ったわけじゃないから」
「そうだったのか」
案の定、ホッとしたのがあからさまにわかった。
付き合ったうちには入ってない。
透はもうここにはいなかったんだから、知りようがない。
いなかったから。私のことなんて、知らない。
知らない。
「安心した?」
もう口角を上げるのが辛くなってきた。
「透は外に出て行っちゃったから、知らないんだよね。直弥くん、高校卒業してからあんまり評判よくないんだよ。透は知らないからね」
最後は何のことを言っているのか自分でもよくわからなかった。
透は面白くなさそうに言った。
「そんな突っかかるなよ」
「だって…」
お皿の上の桃がなくなった。
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