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だって。
だってこんなにも遠い。
どうして、こんなに遠くなっちゃったの?
ずっと胸につかえていたことを、私は言わずにはいられなかった。
「……どうしてあのとき、手をつないでくれなかったの?」
唐突な話だ。でも透もすぐになんのことかわかったようだ。
わかっているのだ。私はあのときから一歩も動けていない。
透はこちらを見て目を見張った。が、すぐに視線を落として、そのまま黙った。
「こたえてくれないんだね」
笑えなかった。
私はもう透の前には存在できないかもしれない。
「ざーんねん」
精一杯ちゃかしてみたけど、もうここにはいられなかった。私は今どんな顔をしているのだろう。
透に見られないようにして、空になったお皿を持って台所へ行った。
お盆の中身を流しに置いて、溜息をついた。
もう昼近かった。
このままでいると、母に「一緒にご飯でも食べていきなさい!」などと昼ごはんを勧められかねない。辺りを見回してみたがいなかった。蔵にでも何か取りにいっているのかもしれない。
もうきりあげてもらおう。
これ以上醜態を晒したくない。
重い気持ちで座敷に戻ると、透が廊下に仰向けに寝転んでいたので驚いた。
「わっ、何してるの」
「あのさ、佳奈覚えてる?」
「何を?」
透は寝転んだまま話だした。
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