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「いつだったっけ? 一年生くらいのころ? 夏ここに泊まりにきたときにさ、暑くて夜全然寝れなくて、涼しいところはないのかって二人で考えて、夜ここの廊下にそのまま寝たことあったよな」  小さい頃は長期休みのたびにお互いの家に泊まったりしていた。 「あったね」 ここは庭の大きな木のおかげでちょうど日陰になっており、特に夏は冷房のない家にとって最高の場所だった。何か食べたり、そこで遊んだり、ごろごろしたり。 当時は寝転んでも余裕があり、一人でこんなに廊下いっぱいにならなかった。この廊下もこんなに狭かったのか。  私は透の頭の上にしゃがんだ。 「すごい体は痛かったけど、冷たくて気持ちよくて」 「うん」 「で、朝になったら涼しすぎて、布団もかぶってないし、パジャマから腹も出てるしで、二人とも風邪ひいたんだよな」 「朝は寒かったんだよね」 「たしか佳奈のおばさん、……いや? おばあさんに?」 「そう! おばあちゃんに、怒られた」   さっきまで塗り潰そうとしていた記憶が、懐かしさと一緒に一気によみがえってしまう。 ずるい。この男は一体何を言い出すのか。今さらそんなことを言って惑わせるのはやめてほしい。私がどれだけとらわれて身動きできないのか、わかってない。 でも嬉しかった。 だって、それは私と透だけの話だから。誰かの話題ではない、二人だけの話だから。 最後かもしれない。 自然と笑顔になれた。
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