強欲な王様

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強欲な王様

「明日の夜が満月だ、わしが注文したものは用意できておるのか?」 王様が勢いよく訊ねると、執事は自信を持って答えた。 「はっ、万事うまくいっているとの報告を受けております、お楽しみにお待ちください」   これはかなり昔の、ある国の王様の話。 この国の王様は強欲で傲慢だ。王子だった頃は可愛げもあり給仕の者たちも喜んで身の回りの世話をしていたが、先代の王である父が亡くなり、王の座を継承してからは富と権力を私利私欲のために使いまわした。週に1度は王様を崇める日として国民全員に対し、宮殿に向かい膝をついて額を地面につける時間を設けたり、宮殿を豪華絢爛にするために国民から多くの金品を回収するような制度を設けたりした。最近では国内のものだけでは飽き足らず、国外から珍しく価値があるものを欲しがるようになり、国の賢いものたちにそれらを集めるように命令をするようになった。 他国の屈強な兵士たち、隣国の王の美しい娘、異国の森林の奥地に棲むと言われているドラゴンの紅く輝く心臓など、それらを集めるために紛争が起きたり、国の兵士たちが多く死んでしまうこともあった。 今回王様が要求したものとは、視力が回復する薬であった。歳を重ね目が悪くなってきたのをしばらく気にしているらしかった。次の満月の夜に国中の者が持ち寄った物を全て試してみて、王様が気に入ったものを持ってきた者に褒美を与えるのだ。
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