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リラは驚きで何も言えず、川の中で座り込んだまま自分を見下ろすゲノルを見上げれば、ゲノルも驚いた表情でリラを見ている。
「おい、ゲノル!」
「あなた!リラになんてことするのよ!」
ゲノルの突然の行動に、動揺するリンソン王子の声と、怒ったスリフの声が聞こえる。
ゲノルは表情を冷やかなものに変えてから、「こいつ、うるさい」と王子に言葉を返し、その視線をそのままスリフに向ける。
「お前も、うるさいな」
「暴力で自己主張なんて、低俗な人ね」
スリフは気押されずにゲノルを睨み続けた。
「ゲノル。スリフに怪我でもさせたら許さないぞ」
一触即発は空気を感じてリンソン王子が威圧的に声をかける。
「はいはーい」
ゲノルは気の抜けるような軽い口調で応えたが、場の空気はまだピリピリしていて、力では誰もゲノルに敵わないこともあり、王子が折れた。
「これに懲りて、少しは女らしくお淑やかになるんだな」
リンソン王子は威厳だけは保とうと、リラにそんな言葉を残して去っていく。
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