風の国

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「なぁ、スリフ。今日こそ俺たちと遊ぼうぜ」 「何度も言ってるでしょ?私、笛を吹けない人に興味ないの」 「笛がなんだ。父といい所詮楽器に何ができる。今必要なのは武力さ」 近くまで行けば店先には、艶やかな長い髪ときらめく瞳が印象的な美しい少女・スリフと、そこに群がる数人の男が見える。 彼女の柔らかそうな唇から呆れたようなため息が漏れる。 群がる男たちのリーダー、この国の王子であるリンソン王子が周りにも聞こえるように朗々と語り出す。 「3ヶ月程前、隣国の火の国が魔者に襲われた。土の国や水の国も既に魔者の支配下にあると言われている。魔者からこの国を、この大陸を護る使命と力が俺にはあるんだ!」 彼の堂々とした語り口に、遠巻きに彼を見ていた女性たちが熱っぽいため息を吐く。おじさんたちも若い王子にエールを送る。 リラにとっては童話の読み聞かせ程度でしか知らないのだが、この大陸には壮大な歴史がある。
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