本篇

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一 とある大きな家の前に或る小さな少年が立っていた。その少年は迚、純粋な子供である。迚、緊張した様な顔で震えた小さな手には一つの手紙が握られていた。少年は思いっきり目を閉じ、手紙をポストを入れては直ぐに小さな足で走り去った。そんな小さな少年の名前は幸、本統に小さな小さな純粋な男の子である。 ___幸はいつもの様に家から出て学校に通う。そんな彼の表情は待ち遠しく、楽しみにしてそうな顔で、微笑んでいた。駆け足で此の儘学校に行き、教室に入れば同級生たちが居る。「おはよう」幸は小さな声で挨拶をして、自分の席に座った。そして、比較的周りの同級生より小さな体をしていた。彼は早生まれで生まれた子供であった。だから皆より背が小さい。今日の一限目は体育であった。小さな幸にとっては地獄である。力も弱く、走る速ささえも遅い。そのせいか幸はいつも周りに馬鹿にされていた。二限目、三限目、時が過ぎるが幸はまともに授業はせず、手紙を書いていた。そんな彼の様子を見る後ろの席の男の子はずっと幸の事を見つめていた。授業が全部終わり、直ぐに幸はあの大きな家に向かう為荷物を早く纏めようとしていた。すると幸をずっと見ていた男の子が話しかけて来た。 「チビ、此の後何をするんだ?」 偉そうな口調で話しかけて来たのだ。幸はそれに対して表情には出なかったが心底鬱陶しいと感じていた。 「ぼくは別に何もしないよ。」 「だったら後ほ僕の相手をして呉れ。」 どうしても、幸は断りたかったのか荷物を全て入れて一歩後退りをした。 「逃げるのか、自分の足が遅いのわからっているのだろう」 幸も自覚している。だが、一か八かだ。幸は思いっきり走った。相手は追いかけて来る様子は無かったが幸は一目散に一度は家に帰った。ドアを強く開けては閉め、息切れをして玄関に立っていた。すると部屋から母親が出た。 「おかえり幸ちゃん。急いで帰って来たの?」母親は首を傾げて幸に訊いて居た。それに対して頷いた。 「今日もお友達の家に行くの?」 「うん、行く。」 小さく言って、ボソボソした。母親には好きな人がいるとは言っていない。だから、友達だと認識されている。鞄を置き、中身にある手紙を素早く取ってはまたドアを開けたまま走って行った。母親に何か注意された気がするが幸は聞き耳も持たず、気にせず向かったのだった。手紙を右手に持って走った。相手の住まう、あの家に向かう為に。何時しかは目的地に着いて、ポストの前に立っていた。また、緊張が出る。手紙を両手で持ち、足は震えていた。そんな事をしていたらドアが開く音が聞こえた。幸はその小さな体を使って何処かに隠れた。顔を少し覗かせ、ドアの方を見た。そこには一人の白いワンピースを着た女性がいた。幸はその女性を見つめていた。見ている内に近所からおばさんが来て女性と会話をしていた。 「こんにちは、愛美さん。お体は大丈夫で?」 「こんにちは、大丈夫ですよ。」 愛美さん、それが幸の想い人だった。幸は子供、相手は立派な女性だった。だから、密かに想いを寄せ、いつも手紙を送っていた。やがて、会話は終わり、愛美さんはポストを開け、手紙を取ってくれた。その時、どんな顔をしているがわからないが幸は笑顔であることを望んでいた。此の儘、手紙を持って家の中に入って行ったのを見た。すると、一つの窓から愛美さんが見えた。手紙を開けて、読んで呉れていた。表情は微笑んでいた。幸はそれが嬉しくなりご機嫌になり静かにその場を離れ笑顔で歩き、家に向かったが学校で後ろの席の男の子と遭遇した。 「やあ、また会ったな。」 彼は腕を組み、仁王立ちをしていた。幸は直ぐ様厭そうな顔になり相手を睨んでいた。その儘無視をして帰ろうとしたが通せんぼをされる。相手はニヤニヤした様な顔であった。怒りが段々混み上がるが通せんぼされながらも俯き、無視をした。隙を見つければ珍しく足を早くさせて走った。つまり、逃げ足が早いのだ。幸は走り続き、我が家に辿り着いた。「ただいま」そう言ってドアを開け、寝床に飛びついた。その時、幸は足をバタバタと動かせたのであった。
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