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どれくらいの時間が経っただろう。朧依は目を開き、ぼんやりと天井を眺める。喉が渇いた。すっかり痩せてしまった朧依に、2リットルのペットボトルは重い。おそるおそる持ち上げ、口をわずかに傾けたその時、玄関の扉を激しく叩く音がした。思わず落としてしまったペットボトルから緑茶が流れ、カーペットにみるみる大きなシミを作っていく。
(ああ、カレが帰ってきたら、またお仕置きをされてしまう…どうしよう…。まあ、いいか……死ぬわけじゃないから。)
どくどくと流れていく緑茶を見つめる朧依の耳に、その名を呼ぶ大声はまだ届かない。やがて戸を叩く音も、叫ぶような声も聞こえなくなったが、朧依は無言のまま、ベッドサイドに置いてあったメロンパンを咀嚼していた。
次に朧依の意識が浮上したのは、寝室のドアを蹴りつける音がした時だ。がつっ!がつん!という音に、さすがの朧依も肩をびくりと震わせた。
「か、かえって、きたの?」
「朧依!朧依っ!…ここ、鍵がかかってる。すみません、このドアを開けてください!」
「了解。」
「だ、だれ?」
再び荒々しい音が聞こえ、勢いよく開け放たれたドア。その向こうに立っていたのは、製薬会社の元同僚、城之内とマンションの管理人、そして二名の警察官だった。
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