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陳先生はアルファとオメガの番と呼ばれる関係と、その生殖行動について研究されているその道の権威で、今はアルファが発情したオメガのうなじを性交中に噛むことによって生まれる番関係がなぜ、オメガにだけ生涯にわたり不変なのか―――つまりアルファは番のオメガがいてもその他大勢の人間と何ら制約なく性行為ができるにも関わらず、番を得たオメガはそれ以外の人間と交わるとアナフィラキシーショックに近い拒絶反応を起こし、実質的に生殖相手が一人だけに制限されるのはなぜか、そのメカニズムを調べている。
陳先生を交えた、研究室でのウェブカンファレンス。そこで朧依が聞いた内容は衝撃的なものだった。
「アルファがオメガのうなじを噛むことで、オメガの体内に備わるmating cell、つまりツガイ細胞が一気に増える。増えたツガイ細胞は周囲に広がり、さらに増える。オメガの命が尽きるまでね。」
「ツガイ細胞…しかもそれが増殖する仕組みは多段階発がんと同じ…つまりオメガにとってアルファと番になるということは、がんになる、というのと同じようなことですか…。」
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