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襖を開けると、そこには蓮の姿があった。
白髪に切れ長の目、紺色の着物。
闇己が知っている白狐なのだが、その様子はいつもと違っていた。
狐の娘に酌をさせ、浴びるように酒を飲んでいる。
そして着物もはだけていて……。
いつも真面目に母に使えている白狐の姿はなく、昼間っから酒に溺れている駄目男がいた。
「蓮殿……」
成長の早い鬼子でも、齢は三つ。
嫌な大人の姿を目の当たりにし、ジト目になっている。
「……これは、闇己様!?」
呟きが届いたのか、蓮は闇己に気付いたようだ。
「申し訳ありません、暫しお待ちを」
そう言うと、蓮ら御簾を下ろした。彼の姿が御簾の向こうに隠れる。
狐の娘は酒を片付けると一礼して奥に消えていった。
「お見苦しい姿を見せてしまい、大変申し訳ありませんでした」
暫くして御簾が上げられると、きっちりと着物を直した蓮の姿があった。
それも、先程までの着物ではなく正装になっている。
「春海様に仕えて以来、暇をいただくこともなかったものですから……」
暫くぶりの休みに羽目を外しすぎたらしい。
蓮は丁寧に頭を下げて謝罪をした。
「こちらこそ、急に伺ってしまいすみませんでした。実は、母様からの紹介があって来たのです」
そう言って闇己が母・春海の手書きした地図と文を見せる。
「春海様からの紹介でしたか……」
蓮が文を受け取り目を通すと、少し悩んで首をかしげている。
何か思案している様子のまま、暫しの時間が経った。
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